2024年も猛暑予報、伊勢志摩トライアスロン大会など先週末開催された大会も、酷暑のため軒並みランの距離が変更されました。
今週末も皆生トライアスロンや日和佐トライアスロンなど暑いレースが続きます。
ベテラン選手は暑熱対策や熱中症対策は万全だと思います。
一方で初心者🔰及び今期トライアスロンデビューされる皆さんは普段から適切に暑熱対策を行い熱中症に注意してレースに参加ましょう。
という事で、今回は熱中症の種類や熱中症予防、暑熱対策について紹介します。
はじめに
トライアスロン選手が暑い環境でも安全かつ快適に競技し、ベストパフォーマンスを発揮するためのアドバイスを紹介します。
大会に参加する選手は自分の身体のリズムや機能を理解し、以下のポイントを参考にして大会に備えてください。
1. ポイント
- 体温管理
- 高体温はパフォーマンスと判断力を低下させるため、体温を下げる努力が必要です。
- 体温を下げる方法
- 定期的な水分補給と体に水をかけることで直接冷やすことが重要です。帽子を被ると頭部の輻射熱を遮断できます。
- エイドステーションの利用
- エイドステーションを飛ばすと一時的に速くなりますが、脱水になるとペースダウンにつながります。
- バイクでの水分準備
- バイクには51.5のレースでも最低でも1リットル(※後述しますが個人差が大きい)の水分を準備し、終了時に水が残っていると給水不足の目安になります。
- 保冷ボトル凍らせたボトルの活用
- 冷えた水を使うことで、体内から効率的に体温を下げることができます。
- レース前の給水
- レース前日や当日の朝から十分な水分(塩分)を摂ることが重要です。レースまでの準備中も確実に脱水は起こっています。レースまでの待ち時間もしっかりと水分と塩分の接種を行いましょう。
- 長時間ウェットを着用すると脱水が進みます。ウェットはスイムのアップ直前に着用しましょう。
2. レース中の補給
- 水分補給
- レース中の体重減少のほとんどは汗によるものです。体重の2〜3%以内に減少を抑えるように水分を補給します。
- 例)体重70kgの選手が気温25℃、湿度60%で10kmを60分走ると、体重が1kg減少(個人差大)します。2時間30分で2.5kg減少する場合、少なくとも1.5kgの水分補給が必要です。
- 塩分補給
- 汗と一緒に塩分も失われるため、塩分補給が必要です。一般的なスポーツドリンクや経口補水液が適しています。
- 塩分補給は汗と一緒に失った量より少し少なめで大丈夫です。
- 自分で作る場合、ペットボトルに食塩を入れ、目安は2本の指でつまんで約0.5gです。
- 現在は優れた電解質サプリメントが販売されているのでサプリメントがお勧めです。↓
次は熱中症の種類とその対策について紹介します。
熱中症の種類と対策
熱中症の種類
- 熱失神
- 症状: めまい、失神、顔面蒼白、呼吸回数の増加、唇のしびれ、速くて弱い脈
- 原因: 皮膚血管の拡張による血圧低下、脳血流の減少
- 熱疲労
- 症状: 脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気
- 原因: 大量の汗をかいて水分補給が追いつかず脱水状態になる
- 熱けいれん
- 症状: 足、腕、腹部の筋肉に痛みを伴うけいれん
- 原因: 大量の汗をかき、水だけを補給した際に塩分濃度が低下する
- 熱射病
- 症状: 意識障害(反応が鈍い、言動がおかしい、意識がない)、頭痛、吐き気、めまい、ショック状態、全身臓器の血管障害
- 原因: 体温の上昇により中枢機能に異常が発生
熱中症の危険信号
- 高体温(39℃~40℃)
- 赤く熱い乾いた皮膚
- ズキンズキンとする頭痛
- めまい、吐き気
- 意識障害(異常な応答、反応なし)
熱中症の重症度分類
- Ⅰ度: めまい・失神、筋肉痛・硬直、大量の発汗(現場での応急処置で対応可能)
- Ⅱ度: 頭痛、気分不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感(病院への搬送が必要)
- Ⅲ度: 意識障害、痙攣、手足の運動障害、高体温(入院して集中治療が必要)
熱中症が疑われる場合の対応
- 涼しい場所への避難
- 風通しのよい日陰やクーラーの効いた室内へ
- 脱衣と冷却
- 衣服をゆるめて体を冷やす
- 水を掛けてうちわや扇風機で扇ぐ
- 氷嚢を頚、腋の下、脚の付け根に当てて血液を冷やす
- 水分・塩分の補給
- 冷たい水(5度~15度)や経口補水液、スポーツドリンクを与える
- 応答が明瞭でない場合、経口摂取を避ける
- 医療機関へ搬送
- 自力で水分摂取ができない場合は速やかに医療機関へ搬送しましょう。
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php
熱中症予防のための運動指針(WBGT温度基準)
- 35℃以上(WBGT31℃以上): 運動中止
- 31~35℃(WBGT28~31℃): 厳重警戒、激しい運動を避ける、積極的に休息・水分補給
- 28~31℃(WBGT25~28℃): 警戒、積極的に休息・水分補給
- 24~28℃(WBGT21~25℃): 注意、熱中症兆候に注意しつつ水分・塩分補給
- 24℃まで(WBGT21℃まで): ほぼ安全だが適宜水分補給が必要
https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php
↑詳しくはコチラをご覧下さい。
熱中症対策の基本
- 練習時間の選定: 朝や晩など涼しい時間帯を選ぶ
- 適切な水分・塩分補給: 15~20分ごとに水分摂取、0.2%程度の塩分補給を行う
- 体重管理: 運動前後に体重を測り、発汗による体重減少に応じた水分・塩分補給。
- 休息: 無理をせず積極的に休息を取る
- 適切な衣服: 軽装で通気性の良い服装を心掛ける
レースだけでなく普段の練習から、これらの対策をしっかりと行いましょう。
熱中症の症状や重症度をしり、症状がでた場合は無理せずリタイヤすることも重要です。
酷暑下での持久系スポーツの基本対策
概要
酷暑下でのスポーツは熱中症に陥りやすい活動の一つであり、大会だけでなく大会に向けたトレーニング自体が過酷です。
しかし、適切な対策をすれば安全に練習や競技ができます。以下にその基本をまとめます。
結論
- 水分補給だけでなく体に水を掛けることも重要。空気に当てて気化熱を奪うことで体温を下げる。
- 氷を握る、濡れタオルなどで直接冷やす方も効果的です。
- 水分補給、電解質補給、掛水、帽子、白いウェアやアームカバーを着用する
水分補給だけでは不十分な理由と対策
- 水分補給だけでは不十分
- 汗による体温調節は体温に近い温度で効率が悪い。
- 水分と共にミネラルも失うため、塩分補給が必要。
- ガブガブ飲むとお腹を壊すリスクがある。
- 低ナトリウム血症のリスク
- 水分だけの補給ではナトリウム比率が低下し、脱水と塩分不足の二重苦になる。
- 塩分補給も欠かせない。
- 簡単な練習方法
- 普段は空きペットボトルを使って公園の水道で水を入れ、走りながら体に掛ける。自販機での購入もOK
- 大会ではエイドで必ず水を掛け水分を補給する。
- 熱中症に対するの浅い人が多い
- 水分補給の重要性は一般的だが、氷を握ったり、水を掛ける方法はそこまで広まっていない。
- 情報が不足しているため、多くの人が根性や我慢で乗り切ろうとして失敗する。
- 注意点
- 水を掛けることは体温を効率的に下げ、急性症状を防止する。
- 水分補給、塩分補給、糖質摂取とセットで行うのが効果的。
熱中症予防のまとめ
- 酷暑下での長距離スポーツでは、適切な水分と塩分と糖質の補給、掛水やギアなど体温を下げる対策が不可欠。
- 熱中症に対する知識を持ち、日々の練習から実行することで熱中症のリスクを減らし、パフォーマンスを向上させる。
補給については改めてブログで紹介しますが、今回も少しだけレース時の補給についても紹介します。
https://kona-challenge.com/archive/v1/monthly/monthly201907.html
今回は補給戦略について良い記事があったので要約します。
補給戦略、給水の重要性
アイアンマンやロングディスタンスのレースでは、給水・補給戦略が結果を大きく左右します。
十分なトレーニングをしても、補給に失敗してパフォーマンスを発揮できないケースも多いです
レース前の食事管理
基本の重要性
↓レース前日、当日の食事については以前紹介しました。
本来は日常の食事が最も重要であり、レース3日前から何を食べるか(現在は前日からで良い)よりも、毎日の食事管理が鍵となります。
日々の食事が身体を作るため、以下のセルフチェックを行い、日々の食事内容を確認しましょう。
セルフチェック10
- たんぱく質
毎食肉や魚、卵などを摂る。たんぱく質はこまめに摂取することが大切。 - バランスの取れた食事
ご飯+おかずは3品以上。主菜はたんぱく質、副菜はビタミンやミネラルを含むものを。 - 野菜の種類
濃い色と薄い色の野菜を組み合わせて摂る。 - 海藻・きのこ類
ミネラルや食物繊維が豊富で、毒素の排出にも役立つ。 - 鉄分
鉄分を多く含む食品を意識して摂る。特に豚レバーに豊富。 - ビタミンB1
糖質の代謝を助けるビタミンB1を摂る。豚肉や大豆製品に豊富。 - 間食の目的
不足した栄養素を補うために間食をする。 - 飲み物の選び方
ジュースよりもお茶や水を飲む。 - 原材料の確認
買い物時に商品の原材料を確認する。添加物にも注意。 - 運動後の補食
運動後30分以内に糖質とたんぱく質2:1の割合で摂る。
レース当日の食事と補給
レース当日の食事
レーススタート3時間前に食事を摂り、1時間前に補食を入れます。スタート直前の30分前には固形物を避け、サプリメントなどで糖質を摂取します。
レース中の補給
レース中は水分、塩分、糖質(エネルギー源)を補給します。1時間に500〜800mlの水分を摂取し、塩分は水分の0.1〜0.2%が目安です。糖分はエネルギー源としてブドウ糖が最も効果的です。
必要カロリーの計算
【基本の計算式】
1.05 × Mets(運動強度) × 運動時間(h) × 体重(kg) = エネルギー消費量(必要なカロリー数)
【体内に蓄えているエネルギー】
- 脂肪(20〜30%)
- 筋肉グリコーゲン(1,000〜1,500kcal)
- 肝臓(280〜400kcal)
- 朝食+レース前(500〜1,000kcal)
例:アイアンマンを12時間での完走を目指す場合
・スイム=1時間
・バイク=6時間
・ラン=5時間
と想定すると‥
- 総消費カロリー:7788kcal
- 蓄え分:4228kcal
- 必要カロリー数:3560kcal
ジェル1個120kcalとして、12時間なら最低でも約30個のジェルが必要です。これを3種目に割り振り、スイム前後で3個、バイクで19個、ランで8個などと計算して摂取しましょう。
つまり日常の食事管理がレースの成功に直結します。糖質制限など特別な事はせずバランスのとれた食事を心がけましょう。
レースにかかる時間に応じて必要なカロリーや補給量を計算し、実際にレースで実験し自分なりの(コアでの計測やスウェットテストなど)補給戦略を確立しましょう。
アイアンマンレースではそれらが特に重要となります。
レース中の水分補給や塩分だけでなく糖質の管理も重要です。レース中は糖質も積極的に摂取しましょう。
暑熱順化
https://corebodytemp.jp/
現在は暑熱順化のための機器(Core)も販売されているので積極的に使用しましょう。
私も使用していますし、クライアント達にも推奨しています。
本当にいい時代になりました。社会人は安全第一です。
https://corebodytemp.jp/⇦CoreのオフィシャルHPです。
トライアスロンのトップ選手の例がCoreのHPにあったので要約しました。
クリスティアン・ブルメンフェルトのケーススタディ
背景
- クリスティアン・ブルメンフェルトは2022年のアイアンマン世界選手権で2時間39分21秒のマラソンを走り、3位入賞しました。彼のランデータ(深部温度、皮膚温度、心拍数)は、COREを使用して収集されました。
データの分析
- 深部体温はマラソン開始時に38.3℃、45分後には39℃まで上昇し、80分間39℃付近で安定。その後、深部体温が上昇し始め、レース終盤には40.7℃に達しました。
- ゴール後も深部体温が高い状態が続き、20分後には38.3℃に戻りました。
冷却対策
- ブルメンフェルトは皮膚温度の急激な降下から冷却対策を行っていたことがわかります。頭や胴体に水をかけることで皮膚温度を下げ、体温を効果的に管理していました。
分析とアドバイス
- バイクフィニッシュ時の適切な深部体温:バイク終了時に適度な深部体温を保つことがランでの体温管理に役立ちます。
- 冷却対策の重要性:水分補給、ペース配分、掛け水が深部体温の維持に役立ちます。
- 深部体温の閾値の把握:高体温でもパフォーマンスを維持できるよう、個々の閾値を理解しておくことが重要です。
- 個人差の認識:体温調節は個人差が大きく、暑熱順化がないと危険です。
まとめ
- 熱中症対策として、適切な水分・塩分補給と体温管理が重要です。レース中も適切な補給と冷却対策を行い、パフォーマンスを維持しましょう。
- これらはあくまでも目安であり個人差が大きいのでコアの使用やスウェットテストなどを行うことを推奨します。
https://www.precisionhydration.com/
トップの選手達もかなりの糖質(グラム表示)と水分と塩分を摂取しています。
https://www.precisionhydration.com/?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTAAAR2NiCHkLublTk7Rbf0PKi9-OxeFB2LonO-hrjXUkTve5PApbCFGY8jyzRI_aem_e1BIqNHBOm-NWhorMeneTg ←Precision オフィシャルHP
https://www.triathlete.com/nutrition/sweat-testing-101/←スウェットテスト
自身の体力や能力を過信することなく、適切な暑熱対策やレース中の補給、給水、掛水を行い大会に臨みましょう。
UNITYでは毎週金曜日の20時〜トライアスロンの相談会を実施しています。
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