大人になってからスイムをはじめ、スクールなどに通い、継続して練習しているのに何年経っても余りタイムが向上しない方をよく見かけます。彼も腰痛や故障が多くスイムが上手くならない悩みを抱えてUNITYを訪れました。確かに客観的に観るとおかしいかも知れませんが貴方はストリームラインがとれるでしょうか?手を上に上げただけで腰は反らないでしょうか?
【フォームについての指摘は何度も受けているのに、フォームが一向に改善しない】初心者🔰はもちろん、そんな方も柔軟性(特に上半身)や身体の使い方を見直してみては如何でしょうか?私もそうですが大人からスイムを始めた人間と子供の頃にスイムを習っていた方では身体の柔軟性が全く違います。
下の写真はオリンピック金メダリストを水中で撮影したものですがどうでしょうか?腰はまっすぐですが胸が大きく反り足も膝から下が大きく反っています。彼は特別に柔軟ですがここまででは無いにしても子供の頃から競泳をしてきた方はこの様な傾向にあります。
水泳は全身を使うスポーツであり、技術だけでなく、柔軟性、モビリティ(自分でコントロールできる関節の可動域)、スタビリティ(安定性)が非常に重要です。これらの要素を向上させるための柔軟体操や補強、体幹トレーニングなど様々なエクササイズを取り入れることで、パフォーマンスの向上と怪我の予防が期待できます。
泳ぎながら繰り返し指摘を受けて修正を試みているにも関わらずなかなか技術が向上しない方は考慮してみても良いと思います。
今回はスイムのためのストレッチとモビリティ、スタビリティエクササイズを簡単に紹介します。現在競泳でも陸トレは当然になっていますしウェイイトトレーニングも一般的です。
運動における「モビリティ」(mobility) とは、関節や筋肉が正しい動きを行うための能力、つまり関節の可動域(Range of Motion, ROM)とそれを支える筋肉の柔軟性や筋力を指します。これには、関節が自然に動く範囲だけでなく、その動きを支える筋肉、腱、靭帯の健康状態や機能も含まれます。
ちなみに身体の各関節にも可動性と安定性があります。スタビリティジョイント(安定性関節)とモビリティジョイント(可動性関節)の概念は、身体の各関節が主に安定性を提供するのか、それとも可動性(動きやすさ)を提供するのかを区別するものです。
この理論は、体のバランスと機能的な動きを理解するために用いられ、運動パフォーマンスの向上や怪我の予防に役立ちます。
モビリティの重要性
- パフォーマンスの向上: 適切なモビリティは、運動の効率を高め、より良いパフォーマンスを可能にします。例えば、ランニング、ジャンプ、リフティングなどの動作で関節が適切な範囲で動けることは、より強く、速く、そして効率的に動くために必要です。
- 怪我のリスクの軽減: モビリティの不足は、運動中に不自然な動きや過剰な負荷がかかる原因となり、怪我のリスクを高めます。適切なモビリティは、筋肉や関節に適切なストレスを分散させることで、怪我を防ぎます。
- 全体的な健康とウェルビーイング: 高いモビリティは、日常生活における動作の質を向上させ、痛みのリスクを低減します。関節の健康を維持し、年齢と共に起こりがちな可動域の低下を防ぐことができます。
モビリティを向上させる方法
- ストレッチ: 静的ストレッチや動的ストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性を高め、関節の可動域を広げることができます。
- モビリティエクササイズ: 特定の関節や筋肉群をターゲットにしたエクササイズを通じて、モビリティを向上させることができます。これには、肩や股関節の回転運動などがあります。
- 筋力トレーニング: 筋力を高めることで、関節の安定性を向上させ、適切な範囲での動きをサポートします。特に、関節を取り巻く筋肉を強化することが重要です。
- 定期的なチェックとアセスメント(評価): 定期的にモビリティのレベルをチェックし、必要に応じてトレーニングプログラムを調整することが重要です。専門のトレーナーや理学療法士によるアセスメントが有効です。
ストレッチ
- ショルダーストレッチ:
- 腕を体の前で交差させ、反対側の手で腕を押し付けながら伸ばします。これは肩の柔軟性を高めるのに役立ちます。
- トライセップスストレッチ:
- 一方の腕を頭上に伸ばし、肘を曲げて手を背中に下ろします。反対の手で曲げた肘を軽く押し下げ、上腕三頭筋を伸ばします。
- ラットストレッチ:
- 両手を壁やバーにかけ、体を後ろに傾けながら腰を下ろし、背中と脇の下を伸ばします。
- ハムストリングストレッチ:
- 座って片足を伸ばし、もう片方の足の裏を内ももにつけます。上体を前に倒して、伸ばした足のつま先を掴みます。これにより、ハムストリングの柔軟性が向上します。
- バタフライストレッチ:
- 座った状態で足の裏を合わせ、膝を外側に開きます。このポジションで前傾し、股関節の柔軟性を高めます。
モビリティエクササイズ
- アームサークル:
- 腕を横に広げ、小さな円を描くように回します。徐々に円を大きくしていき、肩の可動域を広げます。
- ヒップサークル:
- 肩幅に足を開き、膝を軽く曲げてヒップを大きく円を描くように回します。これにより、股関節のモビリティが向上します。
- スパイダーマンストレッチ:
- プッシュアップのポジションから、片足を手の外側まで持ってきて、その位置で深く腰を落とし、股関節を伸ばします。
- ダイナミックランジストレッチ:
- ステップを踏みながら、前に出た足の側の手を天井に向かって伸ばします。これにより、股関節と背骨のモビリティを高めます。
- 肩甲骨回転:
- 立った状態で腕を横に広げ、肩甲骨を意識しながら前後に回転させます。肩周りの可動域を広げることができます。
- フロッグストレッチ:
- 四つん這いになり、膝を外側に開きながら腰を後ろに下ろします。深い股関節のストレッチができます。
そしてこれらのモビリティエクササイズと対となるのがスタビリティエクササイズです。皆さんが大好き?な体幹トレーニングと言われる類のものです。
スタビリティエクササイズは、体の安定性を高め、特にコア(体幹)の筋肉を強化することを目的とした運動です。コアの安定(特に腰部が動いてしまう方)がないとスイムでは蛇行したり腰痛を引き起こします。
これらのエクササイズは、姿勢の改善、バランスの向上、怪我の予防、そして運動パフォーマンスの向上に役立ちます。スタビリティエクササイズは、関節を安定させる筋肉に焦点を当て、動作中の体の制御を高めることを目指します。
- 体幹の強化: 体幹には、腹筋、背筋、腹斜筋、および骨盤底筋群が含まれます。これらの筋肉を強化することで、体の中心部の安定性を高め、姿勢を支えます。
- 関節の安定化: 膝や肩、股関節など、負荷がかかりやすい関節の周りの小さな筋肉を鍛えることで、関節の安定性を向上させます。
- バランスと調整能力の向上: 不安定な環境や片足立ちなど、バランスを要する状況で行うエクササイズを通じて、体を制御する能力が向上します。
- 怪我の予防: 体の安定性が高まることで、不自然な動きや過剰な負荷がかかることを防ぎ、怪我のリスクを低減します。
スタビリティエクササイズの例
- プランク:
- 腕立て伏せのような体勢で、肘と前腕で体を支えます。このポジションを保持することで、コアの安定性が高まります。
- サイドプランク:
- 体を横にし、一方の肘と足の側面で体を支えながら、体を一直線に保ちます。脇腹の筋肉を鍛えることができます。
- バードドッグ:
- 四つん這いのポジションから、反対の腕と脚を同時に伸ばしてバランスを取ります。背中と腹部の安定性を高めるのに効果的です。
- 四つん這いのポジションから、反対の腕と脚を同時に伸ばしてバランスを取ります。背中と腹部の安定性を高めるのに効果的です。
- レッグレイズ:
- 仰向けになり、腰を地面に押し付けた状態で、脚をまっすぐ上げ下ろしします。下腹部の筋肉を鍛え、コアの安定性を向上させます。
- ロシアンツイスト:
- 座った状態で上体を少し後ろに倒し、両手で重りやボールを持って体を左右にひねります。腹斜筋を鍛え、体幹の安定性と回旋力を高めます。
- デッドバグ:
- 仰向けになり、膝を90度に曲げて上げ、手を天井に向けて伸ばします。交互に反対の手と足を伸ばしながら、腹部の安定性を鍛えます。
これらのスタビリティエクササイズをUNITYでは腹筋サーキットとして行っています。
これらのエクササイズは、スイムのパフォーマンス向上だけでなく、怪我を防ぐためにも重要です。練習前後にこれらのエクササイズを取り入れることで、柔軟性、モビリティ、スタビリティを向上させることが可能です。
個人の状態やニーズに合わせてエクササイズを選択し、正しいフォームで行うことが大切です。各エクササイズを適切なフォームで行い、怪我を防ぎながら体の柔軟性、モビリティ、スタビリティを向上させてください。
後日改めて紹介しますが上記の写真とイラストの状態はかなり良くない状態なのですが、実際に多くの中高年のトライアスリートがこの状態です。この状態で腹圧をかけようとしても腹圧は非常にかかりにくいです(胸式呼吸になります)更に呼吸筋群が弱っているので睡眠時無呼吸症候群に罹患している可能性も高いです。
胸郭の柔軟性は呼吸の効率とストロークの幅を大きくするために非常に重要です。胸郭が柔軟であることで、より深い呼吸が可能になり、酸素の取り込み量が増加し、パフォーマンスの向上につながります。
https://www.pectusclinic.com/conditions/rib-flare/ ←Rib Flare(詳しくはこちらをご覧ください)
腰痛や肩凝りが酷い方や、呼吸が浅いと自覚がある方や寝転ぶと肋骨が浮き上がっている状態(腰が反っている)の方は、健康のためにも、これから紹介するエクササイズがに取り組んだ方が良いでしょう
それでは胸郭の柔軟性(呼吸のエクササイズ)を向上させるエクササイズを紹介します。
胸郭は、胸部を形成する骨格のことを指します。主に、胸椎(背骨の一部)、肋骨、および胸骨で構成されています。これらの骨格は、心臓や肺などの胸部の臓器を保護し、支える役割を果たしています。
また、呼吸において重要な役割を担っており、肋骨が上昇・下降することで肺の容積が変化し、空気の出入りが行われます。
胸郭の構造です
- 胸椎(Thoracic Vertebrae): 背骨の一部であり、胸部に位置する12個の椎骨です。これらは背中側から胸郭を支えます。
- 肋骨(Ribs): 通常、人間は左右合わせて24本の肋骨を持っています。これらは胸椎に後ろ側で接続し、前側ではほとんどが直接または間接的に胸骨に接続します。肋骨は胸部を取り囲むかごのような構造を作り、内部の臓器を保護します。
- 胸骨(Sternum): 胸部の前面に位置する長い平たい骨で、肋骨の前側がここに接続します。胸骨は、鎖骨(鎖骨と肋骨の最上部を接続)とともに、前側から胸郭を形成します。
胸郭の柔軟性は、特に呼吸や身体の動きにおいて重要です。胸郭が柔軟であると、深い呼吸が可能となり、酸素の摂取効率が向上します。腹圧(腹腔内圧)にも大きく関係し有酸素能力にも関与しますし何よりも健康にとっても重要なのです。
また、スポーツや日常生活の動作においても、胸郭の動きがスムーズであることは、全身の動作効率を高めることにつながります。したがって、胸郭の柔軟性を高めるエクササイズやストレッチは全ての人にお勧めのエクササイズです。
胸郭の柔軟性向上のエクササイズ
- ドアフレームストレッチ:
- ドアフレームに両手を置き、片足を前に出してランジのような姿勢をとります。体を前に押し出しながら、胸と肩を伸ばします。これにより、胸筋が伸び、胸郭の動きが良くなります。
- フロアエンジェル:
- 背中を床につけ、膝を曲げて足を床に平らに置きます。両腕を床に沿って頭の上に向かってゆっくりと動かし、天使の羽を作るような動きをします。この動きは、肩甲骨周りと胸部の柔軟性を向上させます。
- ブリッジポーズ:
- 背中を床に下ろし、膝を曲げて足を床につけます。両手は体の横に置きます。次に、腰と胸を持ち上げてブリッジの形を作ります。このポーズは、胸部を伸ばし、胸郭を広げるのに役立ちます。
- 回旋ストレッチ:
- 床に横になり、膝を曲げて一方の手で膝をゆっくりと反対側に倒します。もう一方の腕は床に平らに伸ばし、胸と脊柱をひねります。これは、胸部の柔軟性を高めるだけでなく、脊柱の回旋運動の範囲も広げます。
これらのエクササイズは、柔軟性、モビリティ、スタビリティを全体的に向上させ、スイムのパフォーマンスを高めるのに役立ちます。定期的に行うことで、より良い結果を得ることができると思います。
長い間スイムを継続しても、なかなかタイムが向上しない方はフォームもそうですが、身体の柔軟性(スイムの場合は特に上半身)の重要性について改めて見直してみては如何でしょうか?
特にスイムはエコノミー(経済性)がランとバイクより重要です。スイムは適切なフォームをとる為には上半身の柔軟性が不可欠です。大人になってからスイムをはじめたトライアスリートこそ柔軟性が重要です。
実際にこれ迄に指導してきた身体の硬いトライアスリートは殆どがスイムが苦手ですね(笑)距離を泳ぐことは重要ですが初心者🔰こそ、まずは自分の身体を整えスイムができる状態(子供の頃からやってる人達ほどではなくとも)にしましょう
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