感覚ではなく心拍数やパワーなど数値をを使ったペーシングは、トライアスロンやマラソンのような持久系スポーツにおいて効率的にエネルギーを管理し、最適なパフォーマンスを発揮するための重要な手段です。
今回は初心者🔰の皆さんの為に具体的なペーシングの心拍数やパワー、これらの指標を利用する際にはいくつかの注意点を紹介します。
かなりの上級者はこれよりもはるかに高い心拍数でアイアンマンを走り切ります(LT1、I F8.0など)が今回はあくまでも🔰初心者の皆さんに向けてのアドバイスです。
アイアンマンレース
トライアスロンのアイアンマンレースでは、長時間にわたってエネルギーを持続させる必要があります。このため、理想的な心拍数は、その人の最大心拍数(Maximum Heart Rate, MHR)の比較的低い割合で維持することが推奨されます。具体的には、アイアンマンレースでは、最大心拍数の60%から75%程度で運動を行うことが一般的に効果的とされています。
- 心拍数: 最大心拍数の60-75%の範囲。スイムは60-70%、バイクは65-75%、ランは70-75%。
- パワー (FTP): バイクパートは65-75%の範囲。ランは一般的に心拍数や感覚に基づきますが、パワーを使用している場合はFTPの70%前後を推奨します。
アイアンマン70.3
アイアンマン70.3、またはハーフアイアンマンは、フルディスタンスのアイアンマンの半分の距離です。そのためアイアンマンより高い強度でレースを進めることが可能です。しかし、アイアンマン同様、エネルギー管理と効率的なペーシングが成功の鍵となります。
- 心拍数: スイムで70-75%、バイクで75-85%、ランで80-90%の最大心拍数。
- パワー (FTP): バイクパートはは70-85%、ランはFTPの75-85%(パワーを使用する選手の場合)
オリンピックディスタンス
オリンピックディスタンスのトライアスロン(スイム1.5km、バイク40km、ラン10km)は、アイアンマン70.3やアイアンマンと比較すると遥かに距離が短いため、選手は更に高い強度でレースを進めることができます。この距離では、スピードとパワーが重要になり、他の選手との駆け引きも起こる可能性があります。そのためレースを展開するための心拍数とパワーの目安を知ることが重要となります。
- 心拍数: スイムで70-80%、バイクで80-90%、ランで85-95%の最大心拍数。
- パワー (FTP): バイクパートは75-90%の範囲。ランについて心拍数に依存することが多いですのですが、使用する場合はFTPの80-90%が推奨されます。
スプリントディスタンス
スプリントディスタンスのトライアスロン(スイム750m、バイク20km、ラン5km)は、トライアスロンの中でも最も短い距離のカテゴリーに属します。このため、選手は比較的短時間で高い強度を維持しながらレースを終えます。スプリントディスタンスでは、よりアグレッシブなペーシングが可能であり、心拍数とパワーを上手く管理することはやはり重要です。
- 心拍数: スイムで75-85%、バイクで85-95%、ランで90-100%の最大心拍数。
- パワー (FTP): バイクパートは85-100%。ランについては高いパワー出力を目指しますが、具体的なパーセンテージは個々により異なります。
これらは一般的な目安であり、個々のフィットネスレベル、経験、レース条件によって最適な心拍数とパワーは異なります。
UNITYでも上級者はバイク、ランともに定期的に乳酸値測定を行いペースを算出していますが、今回はあくまでも初心者の皆さんに向けてなので割愛します。
そして適切なペーシングのためにはトレーニング中にこれらのゾーンでの走行感覚を得ることと、定期的にコーガン(FTPテスト)などのパフォーマンステストを行うことが重要です。
注意点
1. 個人のフィットネスレベルを考慮する
- 最大心拍数(MHR)や機能的閾値パワー(FTP)は個人によって大きく異なります。これらの数値を使用する際には、自分自身のフィットネスレベルやトレーニングの経験を考慮することが重要です。
2. 外的要因を考慮する
- 気象条件(温度、湿度、風)やコースの特性(標高、勾配)は心拍数やパワーに大きく影響します。これらの外的要因を考慮し、必要に応じてペーシング戦略を調整することが重要です。
3. 適切なウォームアップ
- レースやトレーニングセッションの前に適切なウォームアップを行うことで、心拍数やパワーに基づいたペーシングをより正確に行うことができます。ウォームアップは、体を運動に適応させ、パフォーマンスを最大化するのに役立ちます。
4. パフォーマンスの変動を理解する
- 長期間のトレーニングやレースシーズンを通じて、フィットネスレベルやパフォーマンスは変動します。定期的にFTPテストや最大心拍数テストを行い、現在のフィットネスレベルに合わせてペーシング戦略を練ることが重要です。
5. トレーニングとレースでの違い
- トレーニングでは心拍数やパワーを厳密に管理することが可能ですが、レースでは(特にスプリントやオリンピックディスタンスで表彰台などを狙う場合)他者がいるのでこれらの指標に影響を与えることがあります。そのため、完走だけが目標ではない場合はレース状況に応じて柔軟にペーシング戦略を調整する能力も重要です。
6. 全体のエネルギー管理
- 特に長距離トライアスロンでは、全セクションを通じてエネルギーを効率的に管理することが必要です。過度なペース設定で早い段階でエネルギーを使い果たさないように注意し、全体のレース戦略に基づいたペーシングを心掛けることが重要です。
心拍数やパワーに基づくペーシング戦略は有効ですが、これらの指標を適切に利用するためには経験と知識が必要です。
トレーニングとレースの両方において、これらの注意点を考慮することで、より効果的にパフォーマンスを向上させることができます。
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