「骨盤を使う」や「肩甲骨を使う」などの表現は、ランやスイムの指導でよく使われますが、骨盤の動きは股関節の動きと深く関連しています。骨盤自体は複数の骨から構成されており、体の中心部に位置しています。
股関節は骨盤の一部であり、大腿骨(太ももの骨)と骨盤の臼蓋との間の関節です。この股関節の動きによって、骨盤は位置を変えることができます。
ランニングにおける「股関節を使った走り」とは、一般的には股関節の伸展と屈曲(曲げ伸ばし)を指すと思いますが、実際には股関節の動きで大切なのは屈曲や伸展(股関節の前後の動き)だけではありません。
確かに走っている最中に過剰に末端(足指や足首など)を意識する人を見かけますが百害あって一利なしです。
確かに股関節や肩甲骨を中心に身体を動かすのは間違っていないと思います。大切なのは中心であり中心が整った(安定した)結果、末端が変化します。
はじめのシューズの画像は極端な例ですが、股関節のその動きが上手く使えていないと、幾ら速く走ることができても、この様なことも起こりえます。
彼はそこそこ速く走ること(10km40分はきれます)はできますが、身体のケアや丁寧な動作を練習するのが苦手な(性格もありますね‥)故障の多いトライアスリートです。
UNITYではガーミンやアシックス、LEOMOなど様々なモーションセンサーを活用したり、大学や他の施設を利用して定期的にクライアントのデータをとっています。感覚や主観は大切ですが客観的なデータも重要との判断です。
例えばこれらの項目でも【骨盤を軸とした全身の運動】などの項目があります(笑)骨盤、肩甲骨、体幹、腸腰筋などは誰もが重要であると話すと思います。しかしそう話す方は実際に骨盤や股関節の構造を理解しているのでしょうか?
このデバイスでチェックするとサブエガ(2時間50分ぎり)メンバー達が65〜75くらいが多かったのですが3時間30前後のメンバー数名は75〜85でアシックスのデバイス的には速いから上手いわけではないというデータが出ました(笑)
これはLEOMOなど他のモーションセンサーでも同様ですし、自身が多くを指導してきた経験からもいえます。速いと上手いは違います。当然のことですが、速くてもフォームの悪い選手やあまり速くなくてもフォームが綺麗な選手がいます。
股関節を上手く使うことは、ランニングのパフォーマンス向上に加え、怪我のリスクを低減させることも期待できます。そして先ほど紹介し多様に股関節の屈曲や伸展以外の股関節の動きも故障の軽減に大きな役割を果たしています。
https://runmetrix.casio.com/jp/ ☜例えばアシックスとカシオが共同開発したランメトリックスなどでも骨盤や股関節の動きを客観的に計測してくれます。しかし問題はその結果をどの様にして修正するか?です。
これらのデバイスのアルゴリズムに合った走り方にすしようとするのではなく、体幹トレーニングやストレッチ、ランニングドリルや脳機能トレーニング(バランス、巧緻性、ビジョントレーニングなど)で身体を整えた結果データが変化することを目指すといいでしょう。
そこで今回は一般的な股関節を使った走りの特徴や効果的に使うためのポイントを紹介します。
股関節を使った走りの特徴
- 股関節の屈曲: 走る際には、膝を前に上げる動作が含まれます。これにより、股関節は屈曲し、次の一歩に向けて足を前に出す準備をします。
- 股関節の伸展: 地面を蹴る動作では、股関節が後方に伸展します。これは走る際の主な推進力となり、強力な伸展は速度とストライドの向上に寄与します。
股関節を効果的に使うためのポイント
- フォームの改善: 体の前傾姿勢を保ち、上体をリラックスさせます。前傾することで股関節の動きがスムーズになり、より自然に地面を蹴ることができます。
- 膝の高さ: 膝を適度に高く持ち上げることで、股関節の屈曲と伸展の範囲を最大化します。これは、より大きなストライドと推進力を生み出すのに役立ちます。
- 地面を蹴る力: 地面を蹴る際には、股関節の伸展を意識的に使い、後ろ方向への強い推進力を生み出します。足の着地は体の重心の直下またはやや前で行うことが理想的です。
- コアの強化: 強いコア(体幹部の筋肉)は、安定した走りと効果的な股関節の使用を支えます。コアの筋肉を鍛えることで、バランスとパワーが向上します。
ランニング中に動きを意識することも重要(実際はかなり高度)ですが、ランニング中に意識をして数ヶ月経っても改善がみられない場合は、まずは身体の状態(体幹トレや柔軟体操、筋力トレなど)や脳神経系(巧緻性、バランス感覚)が整った状態を作ることが重要です。
あなたがもし意識してすぐに動きを変えることができるなら、誰かに指摘を受け、エラー動作を認識して意識するとすぐに結果が出る(改善できる)はずです。これは3種目とも同じです。でも何度同じ指摘をコーチから受けても受けても一向に変わらない‥・そのまま10年が経過する‥。
かなり昔(コーチングを始める前)からパイオニアのペダリングモニターなどペダリングスキルを可視化できるデバイスが多々ありましたが、多くの方が購入はしたものの修正を試みても修正できずに諦めてきた姿や、点数を出す漕ぎ方をした結果、客観的に観て明らかにおかしいペダリングになっている方々を観てきました(笑)
それはランやスイムやバイクの際に意識して動き(エラー動作を修正)を変えようとしているからです。
もちろん感覚の優れた方はいるので意識すれば数ヶ月(もしくはすぐに)で改善できる人はいますが、そういった方は経験上そう多くははありません。
スイムの時にも紹介しましたが、意識しても変わらない場合は身体が硬すぎる、そもそも姿勢を保持する筋力(体幹力)が足りなかったり、巧緻性やバランス能力などが加齢により(もしくは元々)低下しているのが原因なのかも知れません。
UNITYではそれらを修正する為の体操(体幹トレ、補強運動、ストレッチ各種、ドリル、脳機能トレーニング)を行っています。とはいえ皆さんも身体についての知識をある程度は知っていた方が良いと思うので今回は少しだけ紹介させて頂きます。
まずは先ほど紹介した股関節の屈曲と伸展以外でランニングに関わる股関節と骨盤の重要な動きを紹介します。
骨盤の挙上(骨盤の側方傾斜)
- 骨盤の挙上: 片方の脚が空中にあるとき(例えば片脚で立っているとき)、反対側の骨盤が持ち上がる動きです。これは、ランニング中に片脚で着地している状態をサポートし、脚のスイングに必要な空間を作り出します。
骨盤の挙上を支える筋肉、特に中臀筋や小臀筋を強化するには、サイドプランク、サイドレッグレイズ、バードドッグなどが効果的です。さらにダイレクトに骨盤の側方傾斜を促すエクササイズもあります。
股関節の内旋と外旋
- 内旋: 股関節が内側に回る動きです。ランニング中、特に着地と蹴り出しの際に脚の安定を助け、過度な膝の内側への動き(膝の内側倒れ)を防ぎます。
- 外旋: 股関節が外側に回る動きです。脚の外側への安定を提供し、より効率的な蹴り出しを可能にします。
股関節の内旋と外旋を強化するトレーニングには、モンスターウォーク、サイドレッグレイズ、クラムシェルエクササイズなどがあります。これらは特に臀部の筋肉(中臀筋、小臀筋)や内転筋群をターゲットにしており、股関節の安定性(ランニングの際に腰が落ちない、ヒップロック)を高めます。このほかにも立位で股関節の内外旋を促す体操やドリルなども多数あります。
股関節の内旋と外旋、および骨盤の挙上は、ランニング時の身体のアラインメントを維持し、効率的な運動パターンをサポートします。これらの動きは、特に長距離ランニングや高速走において、疲労によるフォームの乱れを最小限に抑え、効率的な走りを維持するのに役立ちます。股関節の屈曲や伸展も大切ですが地味ですが股関節の他の動きも重要です。
これら関連する筋肉群を適切にトレーニングすることで、結果的にランニングフォームが改善され、怪我のリスクが減少し、ランニングのパフォーマンスが向上すると場合もあります。そして各筋群のストレッチング(過緊張を防ぐ)はトレーニングと対になっています。
次は骨盤自体の動きについて紹介します。
骨盤の動き
骨盤の動きは主に4つに分類されます:
- 前傾(Anterior Tilt): 骨盤の前部が下がり、後部が上がる動き。腰の前側(お腹)が伸び、腰椎(腰の部分の背骨)に曲がり(反り)が生じます。
- 後傾(Posterior Tilt): 骨盤の前部が上がり、後部が下がる動き。腰の前側(お腹)が縮み、腰椎がフラットになります。
- 左右の傾斜(Lateral Tilt): 骨盤の一方の側が他方の側よりも上がる動き。例えば、右側が上がると右脚が短く感じることがあります。
- 回旋(Rotation): 骨盤が左右いずれかに回転する動き。例えば、右に回転すると右側の股関節が前に出る。
これらの骨盤の動きは、股関節の動きや周囲の筋肉の働きによって起こります。例えば、骨盤前傾は、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)や腰椎の伸展筋が引っ張ることで起こり、骨盤後傾は、腹筋や大腿筋膜張筋(太ももの外側の筋肉)などが引っ張ることで起こります。
股関節と骨盤の関係
股関節が動くとき、その動きは直接骨盤に影響を与えます。例えば、股関節を伸ばす(大腿骨を後ろに動かす)動きは、骨盤前傾を促すことがあります。逆に、股関節を屈曲させる(大腿骨を前に動かす)動きは、骨盤後傾を促すことがあります。しかし、これらの動きは筋肉のコントロール下で独立して行われることもできます。つまり、股関節を動かしつつ骨盤の位置を固定することも、特定の筋肉を意識的に使うことで可能です。
骨盤の動きをコントロールすることは、バランスの改善、姿勢の調整、特定の運動パフォーマンスの向上など、多くの身体活動において重要です。また、骨盤の位置を調整することは、腰痛の予防や改善にも役立ちます。
次は骨盤の4つの動きを引き出す主な筋群を紹介します。それぞれの動きをサポートする筋群は、適切なバランスと機能を維持するために重要です。
1. 前傾(Anterior Tilt)
- 大腿四頭筋(Quadriceps): 太ももの前面に位置し、骨盤の前部を下げることで前傾を促します。
- 腸腰筋(Iliopsoas): 脚を体に引き寄せる主要な筋肉で、骨盤を前に引っ張ることで前傾を引き起こします。
- 腰部伸展筋(Erector Spinae): 脊柱の両側に位置する筋群で、腰部を伸ばすことで骨盤前傾を助けます。
2. 後傾(Posterior Tilt)
- 腹筋群(Abdominals): 特に下部腹筋が骨盤の前部を上げ、後部を下げることで後傾を促します。
- 大腿筋膜張筋(Tensor Fasciae Latae, TFL): 太ももの外側に位置し、骨盤を後傾させるのに寄与します。
- ハムストリングス(Hamstrings): 太ももの裏側に位置し、骨盤の後部を引っ張って後傾を促します。
- 臀筋群(Gluteus Maximus, Medius, Minimus): 特に臀大筋が骨盤を後傾させるのに重要な役割を果たします。
3. 左右の傾斜(Lateral Tilt)
- 側方腹筋群(Obliques): 腹部の側面に位置する筋肉で、骨盤の側方傾斜を引き起こします。
- 腰方形筋(Quadratus Lumborum): 腰の部分に位置し、一方の骨盤を持ち上げることで側方傾斜を促します。
- 臀筋群(Gluteus Medius, Minimus): 特に立っている側で働き、骨盤の側方傾斜をサポートします。
4. 回旋(Rotation)
- 腹斜筋群(Obliques): 内腹斜筋と外腹斜筋が骨盤の回旋をコントロールします。
- 腸骨筋(Iliacus)と大腰筋(Psoas Major): これらの筋肉は、特に骨盤の前面で作用し、骨盤の回旋を助けます。
- 多裂筋(Multifidus)と腰部伸展筋(Erector Spinae): 脊柱を支えるこれらの筋肉も、骨盤の回旋に寄与します。
骨盤の動きは、これらの筋群が複雑に連携することで成り立っています。筋肉の柔軟性と強さのバランスが鍵となり、適切な骨盤の位置と動きを保持することが、全身のアライメントと機能の向上につながります。
前述したようにこれらのトレーニングであげた筋群をストレッチすることも重要(鍛えたら整える)です。いうまでもなく普段(日常生活)の姿勢や所作や癖も重要です。
特に腰方形筋は、骨盤と脊柱の動きをコントロールする上で重要な役割を担っており、立位での片足立ちや歩行時など、身体のバランスを保つ際に活動します。
また、腰方形筋は腰痛に関連することが多く、過度に緊張すると腰の不快感や痛みの原因となることがあります。適切なストレッチや筋トレによって、この筋肉の柔軟性と強さを保つことが、腰痛の予防や改善に役立ちます。
筋力トレーニング(体幹トレーニング・補強運動)
上記で紹介した主要な筋群をターゲットにした筋力トレーニング(補強運動)の例を紹介します。これらのトレーニングは、骨盤の動きを引き出す筋群を強化し、全体的なバランスと機能を改善するのに役立ちます。
大腿四頭筋(Quadriceps)
- スクワット: 足を肩幅に開き、腰を下ろしていく基本的なトレーニング。変形として、バーベルを使ったバックスクワットやフロントスクワットも効果的です。
- レッグプレス: レッグプレスマシンを使用し、脚の力でプラットフォームを押し上げる運動です。
腸腰筋(Iliopsoas)
- ヒップフレックス: 床に仰向けになり、膝を曲げずに一方の脚を持ち上げて下ろす運動。重りを足首に付けると強度が増します。
- マウンテンクライマー: プッシュアップのポジションから交互に膝を胸に引き寄せる動作です。
腹筋群(Abdominals)
- クランチ: 仰向けになり、膝を曲げて足を床につけ、上半身を少し持ち上げる運動。頭や首を引っ張らないように注意します。
- プランク: 前腕とつま先で体を支え、体を一直線に保つ運動。コア全体に効果的です。
- ハンギングレッグレイズ:吊り下がりながら脚を持ち上げるトレーニングです、下部腹筋に効きます。
大腿筋膜張筋(Tensor Fasciae Latae, TFL)
- サイドレッグレイズ: 横になり、上になっている脚を持ち上げて下ろす運動。外側の腿と臀部に効きます。
ハムストリングス(Hamstrings)
- デッドリフト: バーベルやダンベルを使用し、背筋をまっすぐに保ちながら重りを持ち上げる運動。
- レッグカール: レッグカールマシンを使用し、脚を曲げて重りを持ち上げる運動。
臀筋群(Gluteus Maximus, Medius, Minimus)
- ヒップブリッジ: 仰向けになり、膝を曲げて足を床につけ、腰を持ち上げる運動。
- スクワットとデッドリフト: これらの基本運動も臀筋を強化するのに非常に効果的です。
腰方形筋(Quadratus Lumborum)
- サイドプランク: 一方の腕で体を支え、体を横にして持ち上げる運動。サイドの腹筋群と共に腰方形筋にも効果があります。
- ダンベルサイドベント: 立って一方の手にダンベルを持ち、体をサイドに傾ける運動。腰方形筋と側方腹筋に効きます。
これらの筋力トレーニング(補強運動)を行う際には、適切なフォームを維持することが重要です。
また、特定の筋肉群に焦点を当てたトレーニング(ストレッチも)を行うことで、骨盤の動きをサポートし、全体的な身体のバランスと機能を向上させることができます。
これまで紹介してように(筋力や柔軟性など)を整えた結果、ランニングフォームが変わる場合もありますし、ドリルや体操を繰り返すことで脳神経系が機能が向上し意識的に動きを改善(トップアスリート達は元々それが優れている場合もあります)することができるようになります。
言うまでもなく自分のシューズを確認して偏ったシューズのすり減りがある方は要注意です。
故障や怪我を防ぐためにも、何か新しい運動(スイム/バイク/ラン/スパルタンなども)を始める際には専門家のアドバイスを求めることをお勧めします。
ランニングフォームもゴルフなどと同じくなるべく初心者🔰のうち(悪い癖がつかないうちに)に専門家に確認してもらい、ある程度は初心者🔰のうちに修正しておくことをお勧めします。
そして故障を起こした場合も基本に戻る(戻る基本はありますか?)ことが重要です。
さあトライアスロンシーズン目前、それぞれの目標に向けて確かな今を楽しんでいきましょう^_^
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